統一教会の経典の秘密

韓国メシヤ運動史研究所シリーズ第5巻 統一教会の経典の秘密 『原理原本』から『真の父母経』まで

『原理原本』に現れた創始者の血統認識を理解することは非常に重要である。

2)『原理原本』執筆

(1)執筆過程
1950年12月4日以降、平壌を離れて劇的に北朝鮮を脱出し、1951年1月27日、釜山に到着した創始者は、その年の5月のある日から『原理原本』執筆を開始した。 6.25韓国戦争で生き残った他の民衆たちと同様に一日一日が苦難の生活だったが、創始者は「神様」をお迎えし復帰摂理が完了する一日のためにポムネッコルの2坪一部屋の土塀の家で平壌から一緒だった金元弼*1と涙の賛美と精誠の中で全体で5冊691ページの分量の『原理原本』を1952年5月10日に完成した*2

(2)主要内容
統一教会は『原理原本』を正式に公開したことがない。筆写本ではない『原理原本』を研究した学者は公式的には鄭珍完だけだ*3。鄭珍完の研究物によれば、総675ページで構成された『原理原本』には目次がないが、巻ごとに題目があるという。

第1巻(1-176頁)
1.*4一つから全存在に
2.生の発源は先有から
3.無形世界と有形世界の同化的根本意義
4.霊人世界と実体人世界との相対的創造原理
5.創造原理と堕落原理は愛で始まる
6.如何に造られたか

7.それでは堕落の始まりを見てみよう
8.何故堕落させたのか
9.神様は私を知っているので、知ることができる
10.1と0は境界を定めることができない
11.原理で探すと聖書は直接教示できない
12.それでは、何故モーセから直接み旨の工作ができなかったか
13.生命の木に対する根本意味
14.神様はアダムから探す工作ができず、アベルからノアまでサタンに対する根本意義 15.審判した後、神様は痛憤
16.神様的責任分担摂理期間
17.ノアからアブラハムまで摂理路程の根本意義
18.アブラハムからイエスまで摂理された根本意義
19.モーセに対する神様の役事の路程がイエスの路程の全貌となる理由

第1巻は『原理原本』の序論に該当する内容を含んでいる*5。『原理原本』 は、「太初はすなわち一つであられる。この一つがすなわち太初である。この根本の、すなわち神様である*6」で始まっているが、根本的な存在である「神様」の存在性と被造世界の創造、「神様」と被造世界との関係を第1巻で説明している*7。良心の存在性を説明しながら、良心の根本が「神様」であると説明する*8。存在の問題を進化論と創造論で説明し、進化論を批判している*9。生心と肉心との関係については、生心の要求通りに生きなければならないと主張してい る。生心が肉身に拘束された状態が堕落の状態と説明し、人間が創造原理通りに生きて行くことが人間の絶対的義務であることを強調している*10。肉身と霊人体の構造と機能及び関係、そして生の原理を究明し、創造原理の基本構造を説明した*11。人の肉体と関連した原理が霊人世界にも適用される原理であることを 前提として霊人世界の生を言及している*12。神様と存在世界の存在原理と創造原理、堕落の内幕、アベルからモーセとイエスの前までの復帰摂理の全体的な内容が、第1巻に収録されている。


『原理原本』第1巻の中盤で創始者は、創造と堕落の動機がすべて愛だったと主張している*13。神様が堕落に干渉しなかった理由*14、神様の存在性と神様と人間との関係についての数理的観点*15、時が来れば新しい真理と原理の根本が明らかになるという内容、アダム家庭とノアまでの摂理的内容、復帰摂理基台造成のためのノアアブラハム、イエスまでの摂理内容、モーセ路程の摂理的意義が含まれている。
 

 ここで筆者が注目するのは血統及び血統復帰と関連した創始者の認識であ る。創始者他界後、韓鶴子が示した血統的アイデンティティや新たに編纂された経典の性格が創始者の血統認識と相反するため*16『原理原本』に現れた創始者の血統認識を理解することは非常に重要である。


「そのため、天の父母が成立してこそ子女の家庭組織成就が始まることが目的であるため、聖徒や天の人はこのひと日を長く待ってきたのだった。そのため、地が完成しなければならない存在がすなわち再臨主であるため、この方は地上にいるとしても、天の全部はこの方を父と母として侍ってこそ成すことに、代わりに成して満たす歴史をして、天の聖徒は私たちを探して合わせようとすることの根本意義である。天の人であれ地の人であれ、この根本父母に侍ってこそ地から永遠生活が始まることで、その地の夫婦は、天の夫婦として永遠家庭建設が始まる時代がすなわち再臨主父格として来られた方である。そのため、この時がすぐに来るようにする為にイエス聖神は力を尽くして来たのである。そのため、再臨基台を捉える役事時期がイエス昇天後に摂理する根本目的である。そのため、このような一つのみ旨成就に第2アダムイエスが未完成した理想部分、第3次アダム格として現われ根本み旨を完成して夫婦として新しい天国家庭建設に目的と合わ せて血代転換する新郞新婦の聖礼式で全世界に伝え、神様の体の部分の分配 を受けて根本理想まで移す道がすなわち再臨主に侍る道であり、父級完成部分霊人体を造成する生霊の道が万天宙を合わせて始まることが根本目的である。 そのため、今は、イエス聖神によって長成した生命級まで来た者たちには、必ずアダム・エバということで逢着を見る。しかし、これは堕落前のアダム級まで来て一つの夫婦級を成就することができる格者ということを教示される信者も今は、多くなくてはならない。そして再臨主根本人間先祖父に侍ることのできる基盤を立てる為の基本準備の基盤は世界各所に始まっていることが事実である。…それでは、イエスはどうなるかというと、長子としてすべての人の侍る中心の見本になるのだ。そのため、後に来られる再臨主が根本になるということを知るのは言うまでもないことだ。この方を中心として地であると同時に天の一部分であるという始まりなので、6千年の歴史完成と天の一つの目的達成の始まりを見る事実であるので、世界の喜びであり、天の喜びである。このような時代が来てこそ、全部、天のみ旨は一つの完成の基台は捕え、嘆息のない世界に第一歩の始まりを 見ることは事実である。そのため、聖書マタイ福音16章27節に人の子は父の栄光に輝いて天使たちと共に来るが、そのとき、それぞれの行いに応じて報いるのであると言われたのである。そのため、再臨は父として来られることも明らかにしたことを知らねばならない。以上のような原理で見たとき、私たちも霊で成すという者が神様の前にどのような者であるかは結論的に各自の解決に任せよう*17

 

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*1:『証言』第1集102頁.「ある日、早朝に先生は私を起こして早く火を灯せと言われた。その時は電灯もな く灯火だった。そして鉛筆と紙を準備するように言われる。その後、『私が言うように書きおろせ』と言われた。それは再臨論に関するものであったが、そのまま続けて話された。私たちは普通、文章を書くときは書いては考え、また書いては考えてと進んで行くが、先生は最初から最後まで休まずに私に話 された。先生が書かれた原理原本は全て先生の筆跡だが、この部分だけは私の筆跡になっている」

*2:統一教会史 上』95頁

*3:鄭珍完,「『原理原本』についての総論的考察」鮮文大2001年度修士論文.

*4:番号は筆者が任意に付けたもの.

*5:『原理原本』1頁.鄭珍完の修士論文の再引用

*6:『原理原本』1頁.鄭珍完の修士論文の再引用.『原理原本』2頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*7:『原理原本』2頁.鄭珍完の修士論文の再引用

*8:『原理原本』4-5頁.鄭珍完の修士論文の再引用

*9:『原理原本』11-12頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*10:『原理原本』17頁.鄭珍完の修士論文の再引用

*11:『原理原本』22-25頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*12:『原理原本』26-28頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*13:『原理原本』36頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*14:『原理原本』58頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*15:『原理原本』72頁.鄭珍完の修士論文の再引用.

*16:2016年12月25日と30日、韓鶴子が公的に発言した韓鶴子の独生女血統認識(創始者は有原罪堕落 の血統で韓鶴子は無原罪純血を主張)は、『原理原本』で把握されている創始者の血統認識と同じでないことが分かる.

*17:文鮮明,『原理原本』(未発刊図書),金元弼筆写本116-117頁.

統一教会の経典形成の背景

1 )統一教会の経典形成の背景


 統一教会の経典の最初の動機は、1935年4月17日復活節の朝、定州公立普通学校4年生だった16歳の創始者がイエスから受けた啓示であった。彼が受けた啓示の内容は、「神様」の摂理に対する特別な役割*1と平素真剣に悩んでいた人類救援事業*2に対する召命であった。これは、創始者の最初の宗教体験と言う ことができ、平凡な人生ではなく、自分の召命を果たすために生涯全体を投入しなければならない使命者の最初の認識と言うことができる。

 幼年時代と青年時代を経る間、創始者の使命者認識は、より具体的な努力と活動につながり、結局、創始者は1941年4月から1943年10月まで東京で留学生活をしていた時、絶対者・神様の存在と人間堕落の理由を悟るようになる。彼は絶対者・神様の実存を論証し、神様と人間は、親と子の関係だという事実*3と人間 を堕落させたサタンの正体と堕落の内幕*4などを8.15終戦前までに*5すべて明らかにしたという。この2つの悟りは、後に統一教会の創造原理と堕落論として具体化され、創始者が著した『原理原本』の核心内容であるだけでなく、後日、統一教会の信念体系と儀礼体系の根幹となった。
  韓国が日帝植民地時代から解放される頃、創始者はすでに原理の大部分を究明し、1945年10月から1946年4月まで、特別な目的を持って金百文のイスラエル修道院に入り伝道活動を開始するなど、本格的な使命者としての人生を開始した。 創始者イスラエル修道院に入って金百文と関係を結ぶようになった動機は、 彼が悟って認識した召命を成すために、当時の主な神霊集団の系譜を受け継い だ金百文の協力が必要だったからであった*6。後日の創始者による言及を見たときに、金百文に会った当時、創始者は韓国の神霊集団の系譜と、キリスト教主流の信仰とは違う彼らだけの独特な信仰の世界を十分に理解していたものと思わ れる。金百文の師匠である白南柱の話、金百文と白南柱が元山の新宗派、金聖道を訪ねて聖主教を日本の朝鮮総督府に登録してあげたという事実だけでなく、 日本植民地時代、北朝鮮で行われていたキリスト教神霊派集団間の関係など、 それらの宗教的な状況を把握した状態で金百文に会った。創始者は韓国を中心に、絶対者・神様の特定の摂理のために用意された集団としてそれらを認識していたのである*7
  創始者が金聖道、白南柱、李龍道そして金百文集団を自分の宗教的使命を助ける「天使長圏」の予め準備された集団と考え、彼らが準備した摂理的基盤を土台として、天からの召命を開始しようとしていた理由に注目せざるを得ない。『原理原本』の内容分析でより深く言及する予定であるが、彼らの業績と信仰から発見できる共通点は、大きく2つに分類される。再臨主は韓国に人間として来るという信仰と、人間の堕落を性的淫乱と信じた点である。しかし、創始者が金百文集団から得ようとしていた本来の目的は達成されなかったという。創始者が金百文集団を離れて*81946年5月27日に天の命を受けて平壌に到着したのは、1946年6月6日だった。その後、創始者が見せた平壌での宗教的行跡は堕落の血統の復帰を通した摂理の重要な条件を成すためであったと思われる。統一教会史に現れた創始者平壌での宗教的行跡は、主に聖書講解を通した神霊集会であった。当時創始者は、主に「神様の創造の話」「天使長の横的愛によって引き起こされたアダムとエバの堕落の経緯」「聖母マリヤ」
「洗礼ヨハネなど使命担当者たちの責任未遂によってもたらされたイエスの十字架の悲劇」などを題目として説教していた模様である*9
ところで当時平壌で伝道された金元弼によると、創始者が1946年6月頃平壌に来たときに『原理原本』の前身と言うことができる、いわゆる「会計本」(会計手帳 に書かれたものでタイトルはなかった)を持っていたという。しかし、この本は現在伝わっていない。
「1946年6月、平壌に来られた時にはすでに『原理原本』の基礎となるものを持っておられました。全体的な内容についてのことをノートに記録して持っておられたものと理解しています。どうして知っているかと言うと、お父様 が興南刑務所におられた時、私が面会に行ったのですが、一度はお父様が 『会計本』のことを話されました。お父様は刑務所におられた時、その『会計本』をチャ・サンスン執事に任せられましたが、お父様はチャ・サンスン執事にお願いして保管するように言われました。それで私がチャ・サンスン 執事に聞いたところ失くしたと言うのです。その当時、警察が来て家の捜索
もしたりしたので、おそらく失くしたようです。それは『原理原本』ではありま せんが、『原理原本』の前身と見ることができますね。しかし、それは完全に 失ってしまったのです*10
 また、朴正華の証言によると「会計本」のほか、『原理原本』の前身ということ ができるまた別のものがあったが、「円和園理想」という題目の原稿であった。 1948年頃、創始者興南監獄に収容されていた時に創始者の「み言葉」を朴正 華が記録し、その分量が原稿用紙1200枚程度になったという。「創造原理」「堕 落原理」「復帰原理」そして「再臨主が如何に来るか」についての内容も、この原 稿に含まれていたようだ。ただし、この原稿は現在残っていないが、朴正華の言 及でその内容の一部を把握することができる。
「将来、円和園が成されると、会員になった人は国境の差がなく言語の違いがなく、私たち韓国の円和園会員が日本に行って見物したいなら日本の円和園会員の家に行って1ヵ月滞在したいなら1ヵ月、10日いたいなら10日、ずっと1年滞在したいなら1年いることができる。また、アフリカへ行っていた人 が、韓国にも来て、韓国にいた人がアフリカにも行くようになって全世界で円 和園会員理想が実現されるだろう。そして、すべての交通も地球の端から端 まで一日で行くことができ、まるで稲妻がひらめく速度に変わる。つまり、世界が一つの家族、一つの囲いになって思いのままにできる世の中になる*11
統一教会創始者が生涯全体を通して注いだ経典に対する精誠を考慮すると、 『原理原本』以前に「会計本」や「円和園理想」のような文書作業に力を入れた ことは明らかである。

 

 

*1:『み言葉選集』第134巻145頁.1985.1.13.;「本人は16歳の時に非常な経験をしました。復活節の朝 に長い時間の涙ながらの祈りの末に、イエス・キリストが本人に現われて多くの啓示と教示を下さい ました。イエスは奥深くも驚くべき事がらについて、多くのみ言葉を話されました。苦痛を受けている人類のゆえに神様が悲しんでおられると話されました。そして本人に地上で神様の役事に対する 特別な役割をしてほしいと頼まれました」

*2:統一教会の足跡』20頁.;『統一教会史 上』13頁.;「先生が16歳になった年の復活節の日の4月17 日であった。…この日、少年・文鮮明先生の祈りの中で忽然とイエス様が現れて厳かな頼みをされ るのであった。それはまさに先生がその頃、内心深く策定して来られた人類救援事業に対する使 命であり、公式的な下命と言えるものであった」

*3:統一教会史 上』24-25頁.

*4:統一教会の足跡』24頁.

*5:統一教会史 上』35頁.;『受難の現場』22頁. 

*6:『み言葉選集』第19巻262頁.;第23巻282頁.;第50巻207頁.;第165巻19頁.

*7:『み言葉選集』第50巻207頁.

*8:統一教会創始者と金百文との関係を理由として、『原理講論』が金百文の『キリスト教根本原理』 (ソウル:東亜出版公社,1958.)を盗作したと一部では主張している。朴英官,『異端宗派批判Ⅰ』(ソ ウル:イエス教文書宣教会,1994),265頁.;しかし、『原理原本』が1952年5月10日に完成し、金百文の最初の著書である『聖霊神学』(ソウル:平文社,1954)が1954年に出たという事実を通して盗作是非の根拠がないことを理解することができる。『原理講論』(1966)は、『原理解説』(1957)から始まっ ており、『原理解説』は、『原理原本』から始まった。前長老会神学大学長・李鍾聲は自分の論文で、キリスト教の正統教理と神学的構造面で原理講論と金百文の本は互いに異なっていると主張している。李鍾聲,「統一教会の『原理講論』,その実と虚-教義学的立場から」『神学思想』第10集 第3巻,1975.479-529頁.

*9:統一教会史 上』1978,40頁. 

*10:金元弼のインタビュー(1998.8.13.),金振春,『統一原理第1部総論』2001,251頁から再引用. 

*11:『史報』第157号,1999.12.83頁. 

創始者の悟りと『原理原本』

2. 創始者の悟りと『原理原本』
 

 統一教会創始者の核心アイデンティティである血統復帰、これを通した救世使命といくつかの社会的事件から始まった『原理原本』は、創始者が体得した天の啓示と自ら探求して明らかにした天の秘密、そしてキリスト教神霊派たちとやりとりした様々な宗教的要素が含まれている。また『原理原本』は、絶対者・神様の実存と天地創造の原理、天使長がエバと性的淫乱関係を通して血縁関係を結び、堕落したエバが再びアダムと肉体的な性的関係を結ぶことで、霊肉共に堕落したという内容などが含まれている。さらに堕落した世界を復帰し救援する過程を詳細に説明している。

『原理原本』が明らかにした「創造→堕落→復帰」の構造は、後に登場する統一教会の教理と経典の根本的な骨組みとなり、統一教会の様々な儀礼を通して具体化された。特に創始者の血統認識と血統復帰儀礼は、救援と復帰のための具体的な行為として人間が堕落した過程と反対の経路として象徴され具体的に実行されている*1

 創始者にとって『原理原本』は、絶対者・神様が宇宙を創造した根本法則と人間の存在についての究極的な質問に対する答えであり、地上と霊界の存在原理でもあった。そして、堕落した人間が堕落前の姿に回復して救われる唯一の方法についての真理であった*2。神話的事件の主人公として、その事件を論理的に 説明することができる「原理」を『原理原本』を通して明らかにした創始者は、神様に代わって、堕落した人類を復帰することができる唯一の中心人物が自分だと認識した。また彼は「再臨のイエス」「人類の救世主」さらに復帰された血統の「真の父母」という自己認識を持って、単に「原理」を宣布したことにとどまらず「原理」を実践する段階に発展していった。

 

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*1:絶対者・神様の許諾を受けない性的淫乱行為と血統の汚れが堕落の原因だったので、その反対の経路に沿った復帰の過程を実践することが血統復帰儀礼である祝福結婚式である。つまり、絶対者に代わって創始者が定める配偶者と婚約し、すでに絶対者の血統に復帰された創始者を通して血統復帰、すなわち重生の過程を実践することが統一教会の祝福結婚式である。

*2:『み言葉選集』第34巻266頁.1970.9.13.;統一思想研究院,『統一思想要綱(頭翼思想)』(ソウル:成和出版社,1994),130頁

文誉進が批判した対象は、『原理講論』ではなく、原理講論の主人公である自分の父・文鮮明だった

 統一教会はいくつかの点においてこれらの傾向と多くの差がみられる。 まず、統一教会は公式的に出発する以前に、統一教会最初の経典といえる『原理原本』が存在し、創始者の生前に創始者の教示を記録した615冊にも及ぶ膨大 な量の創始者のみ言葉選集が公式発行されており、これを含む統一教会の教書などが「八大教材教本」という名前の公式経典として確定されたという事実は、 他の新宗教と区別される特徴である。このような事実を通して、統一教会創始者 が経典に込めた精誠が如何なるものであったかを知ることができる。


 第2に、創始者の宗教体験とアイデンティティから始まり確定した統一教会の 経典が、創始者の他界を前後して、創始者の妻であり統一教会の「真の父母」の 一人である真の母・韓鶴子によって修正される気配がある中で、一部の統一教会 員たちの反発にもかかわらず、「天一国三大経典」という名前の(韓鶴子)『改定天聖経*1』『平和経』『真の父母経』が韓鶴子によって新しい経典として編纂さ れた事実である。この経典は、創始者の宗教的アイデンティティが歪曲される内容を相当部分含んでいるものと思われる。


 第3に、2016年8月22日統一教会学術苑創立シンポジウムで創始者の長女・文誉進が統一教会を代表する教理書であり経典である『原理講論*2』を家父長的 な儒教思想から始まったものと規定し、「絶対者『神様』を二性性相の中和的主体と説明しながらも、被造世界において男性格である父として存在すると説明する『原理講論』は、男女平等の時代に合わない」と主張した事実も*3非常に異例なことだ。厳密に言えば文誉進が批判した対象は、『原理講論』ではなく、原理講論の主人公である自分の父・文鮮明だった。
 

 第4に、創始者の教示と競合する韓鶴子の経典3冊が編纂され、韓鶴子が公的に無原罪独生女のアイデンティティを主張すると、統一教会の一部の神学者たちは創始者の血統的アイデンティティを否定して独生女の血統を合理化する教理の開発に集中している*4

 結果的に、韓鶴子の新しい血統認識から始まった、いわゆる天一国三大経典と創始者の「八大教材教本」が互いに衝突している。
創始者の7男・文亨進が自分の実母であり創始者の妻である「真の母」韓鶴子を「バビロンの淫婦」「堕落したエバ」「レズビアン」と非難しており、韓鶴子が自分の夫である統一教会創始者文鮮明の血統的アイデンティティと権威を否定している現象と共に、筆者は創始者アイデンティティから始まった統一教会の経典が十分な研究と合理化の過程なしに急激に毀損されている現象に注目した。 韓国メシヤ運動史研究第4巻『統一教会の分裂*5』で統一教会経典の変化過程 の特異現象のいくつかをおおよそでも言及したが、筆者は本書を通して統一教会史で発見された統一教会の経典の形成過程と経典の主な内容を追跡しなが ら、韓鶴子によって統廃合され毀損されている経典の内容とこれにまつわる内幕を集中的に叙述するつもりである。

 

 

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*1:世界平和統一家庭連合,(韓鶴子)『改定天聖経』(ソウル:成和出版社,2013).本書では、2005年に創 始者が編纂した『天聖経』(ソウル:成和出版社,2005)を(韓鶴子)『改定天聖経』と区別して(文鮮 明)『天聖経』と表記する

*2:世界基督教統一神霊協会.『原理講論』(ソウル:成和出版社,1966).

*3:文誉進,「両性平等回復の必要性」天一国学術苑創立総会及び第1回学術シンポジウ ム,2016.8.22.62-63頁.文誉進の論文で特に注目される部分は、創始者家庭で長女として生まれ、彼女が経験した男女不平等の話である。「文鮮明総裁と韓鶴子総裁の最初の子供として天の母と女性平等についての内容は個人的にも筆者にとって非常に重要である。統一運動で生涯を送りながら、神様 を男性の神様に局限して紹介していることに失望もし、不満を持っていた。-筆者は女性としてそのよ うな神様と相対するのが困難であった。…キリスト教儒教の全てが人類に多大な貢献をしてきたに もかかわらず、草創期の韓国統一運動の文化が男性中心のキリスト教文化だけだなく、男性と女性は 本来不平等であるという儒教の人間関係の教えの影響を受けた古代韓国文化の男性優越主義の影 響を受けたために、そのようになったのかもしれない。…統一運動でこのような思想的混乱に陥っている人々を見ると非常に残念である。その中には筆者の実の兄弟姉妹もいるが、彼らは深刻に何かを 間違って理解しており、神様と人間の性の平等を認めない過去の家父長的文化を放棄できず、現在、真のお母様の指導力をはなから否定している。そのような行動は真のお父様の志とは反対である」

*4:金振春,「真の父母様の独生子・独生女研究」孝情学術苑創立総会,国際学術シンポジウ ム,2017.2.7.244-256頁. 

*5:金種奭,『統一教会の分裂』(天安:図書出版アウネ,2016).

経典の変化は必然的に宗教的混沌と分派をもたらす

1.はじめに

 

 宗教は一般的に真理が何であるかを説明する文字や、口伝からなる経典を持っている。この経典には、神聖な存在たちの活動を年代記として説明した神話、 世界観と歴史観、神や預言者の道徳的命令が含まれている。つまり、経典にはその宗教の信念体系と儀礼体系と独特な神話が含まれており、それが宗教の価値と正当性を合理化している。経典自体の神聖さは、それが絶対的至尊とどれほど密接な関係にあるかにかかっている。経典は儀礼が行われる間、頻繁に唱えられ、やや世俗的な背景から論議され実践されたりもする。


 特定の宗教経典に含まれる含蓄的文章と神聖な存在や霊感を受けた預言者の言葉、そしてこれに対する詳しい説明は非常に特異で、他の宗教と区別される。制度化された宗教は、ほとんどすべて文書化された経典を提示している。啓示的な新宗教運動も普通その知的土台となり、神によって預言者に伝達されたように見える形式化された文書が含まれている。このような経典は、社会で起きる様々なことへの反省、道徳的訓戒、世の中に「み言葉」を伝えてきた預言者と 宗教的指導者、律法学者などによる邪説の批評と共に、様々な神話的要素を含んでいて聖物として認識される。


 一方、教理は経典に込められた真理を解き、特定宗教の信念体系と儀礼体系 を説明することにより、宗教的アイデンティティを維持する経典解説と理解する ことができる。教理の根本が経典だという点から経典を理解するレベルと観点 によって、他の教理として理解されたり説明されたりもする。これは、同じ経典を 使用していながらも様々な教理の教派が形成される理由でもある。

 

 経典が形成されて変化したり、新しい経典が編纂される現象は、宗教のアイデ ンティティ形成及び変化と共に起こるのが普通であるため、経典の変化は直ちに 宗教のアイデンティティの変化として理解することができる。特定宗教のアイデン ティティが形成されて変わるのは自然な現象だといえるが、アイデンティティの変化かどうかということよりももっと重要なことは、アイデンティティの変化と関連した宗教的一貫性と、合意を伴うアイデンティティの合理化だと言うことができる。

 

 信仰者たちが宗教の経典を絶対視するのは、経典形成過程を通して経典に含ま れている歴史や神話的事件を神聖視して経典を真理自体として信じたり、真理を教えるコンパスや教科書として経典を考えるからである。ところが、特定宗教の経典変化の過程と結果がその宗教が信仰者たちに教えてきたアイデンティティとは無関係 だったり異質である場合、経典の変化は必然的に宗教的混沌と分派をもたらす。創始者他界4周忌を経て混沌と分裂に陥った統一教会の例はこれに属する。


 新宗教創始者が生存している場合は、創始者の言動や宗教体験から始まる創始者アイデンティティ自体が、その新宗教を代表するアイデンティティとなる。特に創始者アイデンティティの変化が頻繁な場合、体系化された経典を整えることが 容易ではない。新宗教の初期に、創始者の宗教体験などに関連する創始者の教示 が経典を代身し、創始者の言動と教示を記録することにより経典編纂として発展する。経典編纂の必要性は、経典に対する創始者の認識によって創始者の生前には 行われず、創始者の死後に行われる場合が多い。経典は、創始者のアイデンティテ ィとカリスマを強化し維持するために、かなりの努力をする。いずれの場合も、創始者アイデンティティを破壊したり矛盾する内容で経典を作る例はない。

 

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この言葉を聞いた参加者たちは衝撃に陥った

独生女が救ってあげた

 

2016年12月25日、韓鶴子統一教会*1天正宮で深刻な発言を吐露した。韓鶴 子のこの発言は、2016年12月初め、統一教会を離脱して米国にいる文亨進のサン クチュアリーに居を移した後、韓鶴子の独生女主張に反対して声明を発表した 姜賢實*2関連対策集会で韓鶴子が主張した教示だった。

 

「私は腹中から3代一人娘の母系として血統転換し、原罪を清算して純血で 誕生した独生女だ。ところがお父様は原罪を持って生まれた。私は一人娘と して生まれたが、お父様には複数の兄弟がいる。お父様が原罪なく生まれた なら、その兄弟たちも原罪がないという話になる。したがってお父様は原罪 なく生まれたのではないということだ」


この言葉を聞いた参加者たちは衝撃に陥ったという。韓鶴子のこの教示が、 これまで統一教会が教えてきた教理と完全に矛盾するからである。彼女の主張 どおり統一教会創始者が原罪を持って生まれた堕落した血統の人間なら、統一 教会が主張してきた統一教会の「復帰原理」は全面的に修正しなければならない*3。またこれと関連した数多くの図書と創始者の教示と資料を変更しなければな らないし、ひいては改宗水準まで統一教会員の信仰を変更しなければならない。
韓鶴子のこの日の発言の影響が深刻になると、韓国協会は協会長・柳慶錫の名で次のような要旨の釈明書を発表した*4

 

「何よりも姜賢實会長はサンクチュアリー教会で主張する内容を、まるで真のお母様が直接言われたかのように話すことによって食口たちに重大な混乱を与えています。『お父様は原罪を持ってお生まれになったと言われまし た』だとか『お父様の位置を格下げしてお母様の位置を格上げした』という 主張は決して事実ではなく、その意味も違います」

 

 ところが、韓鶴子の無原罪独生女発言に対する柳慶錫の釈明が出てわずか一日後の12月30日、韓鶴子統一教会430双祝福家庭以上の元老夫人たちを招集し*5、自分のアイデンティティをより明確にする教示を下した。

 

「原罪を持って生まれたお父様は、原罪なく地上に生まれた独生女に会って原罪を清算した。したがって、お父様は私に会う前に、他の女性との結婚 をしてはいけなかった」

 

 参加者はこの日の発言を通して韓鶴子アイデンティティを明らかに知るようになったものと思われる。そのアイデンティティは蕩減復帰摂理の主人公が創始者(真の父)ではなく、独生女韓鶴子だということと、創始者の原罪を独生女韓鶴 子が清算させて彼を救ってあげたので、メシヤは創始者ではなく、まさに独生女の韓鶴子ということであった*6

 無原罪の純血で生まれた韓鶴子が堕落した血統の統一教会創始者を救ってあげたという主張は、事実上、統一教会創始者アイデンティティとは無関係な 新しい宗教、独生女教が韓鶴子によって公式出発したことを意味する。

 

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*1:本論文で使用する「統一教会」という名称は、1954年5月1日に創始者が設立した「世界基督教統一 神霊協会」と1994年5月1日に創立された「世界平和統一家庭連合(以下、家庭連合)」「2009年10月に 文亨進によって開始された統一教会」と文顯進が主導する全ての摂理的活動を合わせた名称とし て、創始者から始まった宗教的伝統と超宗教的理想を実現するための組織の全てをあまねく包括 する名称であることを明らかにしておく。特に区別する必要があるときには、正確な名称を使用して 記述することとする。時期的には1954-1994:世界基督教統一神霊協会、1994-2008;世界平和統一 家庭連合、2008-2013:統一教、2013-現在:世界平和統一家庭連合と名称が変更された。

*2:)姜賢實の声明,2016.12.21.「ところがある日、青天の霹靂のような言葉が聞こえてきました。お母様は 『私は原罪なく腹中から生まれた時から3代がきれいな純血で生まれましたが、お父様は原罪と共 にお生まれになった』と言いました。いくら理解しようとしても理解ができず、数日間苦痛の中でも がき苦しみました。私の良心では受け入れることができません」
https://youtu.be/d3RY2au75P8.

*3:参加者の伝言によると、天正宮秘書室の鄭元周、趙誠一、ユン・ヨンホをはじめ、石俊淏、李基誠、 柳慶錫、宋榮錫、ヤンジュンス、秦成培、金振春、金恒濟などが現場にいたという。

*4:韓国協会,「姜賢實声明書反論文」2016.12.29.

*5:

http://yuun0726.muragon.com/entry/222.html

*6:韓鶴子のこの日の発言の後、自発的に発生した小規模祝福家庭共同体の構成員たちが公然と反発 し始めた。文鮮明総裁思慕会が2017年1月6日に韓鶴子の独生女主張に反発する「祝福家庭共同体 再建のための声明文」を発表した。https://youtu.be/TEmxS6PedMM.;また、2016年12月22日から毎週日曜日の朝、澤田地平という6000家庭の統一教会員が日本本部教会の前で抗議デモをしている。 https://www.youtube.com/watch?v=ZF-2cMi7CGw.このような試みは、今後、より組織的で大規模に 発生する可能性が高い。

著者・金種奭(キム・ジョンソク)氏の肉声はこちら

最近配信された以下の動画で、著者・金種奭(キム・ジョンソク)氏のセミナー開催時の音声が聞くことができる。

この書籍を綴った彼の憂いと動機が切々と語られている。

 

印象に残るのが

「本当に申し訳ないが、現在の統一教会員達は創始者から学んだ教理と歴史と伝統、このようなものとは個別の新しい宗教に通っているのです。」

 

 

統一教会の経典の秘密」

目次
序文_ⅰ
独生女が救ってあげた!_9

1.はじめに_13
2.創始者の悟りと『原理原本』_17
 1)統一教会の経典形成の背景_18
 2)『原理原本』執筆_22
3.『原理解説』_33
 1)『原理解説』執筆の背景_33
 2)『原理解説』の特徴と内容_35
4.『原理講論』_43
 1)出版過程_43
 2)『原理講論』の構造と内容_44
 3)『原理講論』に対する創始者の認識_52
5.「八大教材教本」_57
 1)「八大教材教本」の確定過程_57
 2)天一国経典「八大教材教本」完成宣布_67
 3)「八大教材教本」の価値と制定過程_77  
  (1)「家庭誓盟」_79
  (2)(文鮮明)『天聖経』_83
  (3)『平和神経』_91
  (4)『天国を開く門、真の家庭』_101
  (5)『平和の主人、血統の主人』_102
  (6)『原理講論』_105
  (7)『世界経典』_109
  (8)『文鮮明先生み言葉選集』_111
6.統一教会の分裂と経典を毀損した韓鶴子_117

 1)統一教会の分裂と創始者の他界_117
 2)経典毀損の背景:韓鶴子の神格化_128 神格化の最初の作業:神様の夫人論_129
 3)『文鮮明先生み言葉選集』毀損後に再配布_140
 4)『文鮮明先生み言葉選集』毀損内容_140
  (1)創始者の血統に関する言及削除_141
  (2)韓鶴子に関する言及削除_142
  (3)文顯進に関する言及削除_144
  (4)郭錠煥に関する言及削除_146
  (5)文國進、文亨進に関する言及削除_150
 5)「八大教材教本」の毀損と(韓鶴子)『改定天聖経』『平和経』発刊_153

  (1)「八大教材教本」の毀損_153
  (2)韓鶴子による「八大教材教本」毀損の内容_166
   ①『天聖経』解体_166
   ②『平和神経』解体と統廃合_169
   ③「家庭誓盟」変造_172
 6)経典改定の終着:韓鶴子の独生女論_174
   ①韓鶴子の独生女に関する言及_175
   ②マスコミに報道された独生女_185
   ③文亨進の独生女に関する言及_187
 7)創始者の血統を公的に否定した独生女_190
 8)『真の父母経』発刊:独生女論教理化の試み_191
  (1)発刊過程_191
  (2)『真の父母経』発刊の意図_194
  (3)『真の父母経』の偽書論争_195
7.終わりに_201

 参考文献_205
  付録_211
  付録1.『み言葉選集』第594巻-第615巻の削除分析_213
  付録2.天聖経増補版監修案内書_421
  付録3.天聖経増補版に対する正しい理解_429
  付録4.天聖経増補版監修委員委嘱案内_435

 

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