統一教会の経典の秘密

韓国メシヤ運動史研究所シリーズ第5巻 統一教会の経典の秘密 『原理原本』から『真の父母経』まで

経典の変化は必然的に宗教的混沌と分派をもたらす

1.はじめに

 

 宗教は一般的に真理が何であるかを説明する文字や、口伝からなる経典を持っている。この経典には、神聖な存在たちの活動を年代記として説明した神話、 世界観と歴史観、神や預言者の道徳的命令が含まれている。つまり、経典にはその宗教の信念体系と儀礼体系と独特な神話が含まれており、それが宗教の価値と正当性を合理化している。経典自体の神聖さは、それが絶対的至尊とどれほど密接な関係にあるかにかかっている。経典は儀礼が行われる間、頻繁に唱えられ、やや世俗的な背景から論議され実践されたりもする。


 特定の宗教経典に含まれる含蓄的文章と神聖な存在や霊感を受けた預言者の言葉、そしてこれに対する詳しい説明は非常に特異で、他の宗教と区別される。制度化された宗教は、ほとんどすべて文書化された経典を提示している。啓示的な新宗教運動も普通その知的土台となり、神によって預言者に伝達されたように見える形式化された文書が含まれている。このような経典は、社会で起きる様々なことへの反省、道徳的訓戒、世の中に「み言葉」を伝えてきた預言者と 宗教的指導者、律法学者などによる邪説の批評と共に、様々な神話的要素を含んでいて聖物として認識される。


 一方、教理は経典に込められた真理を解き、特定宗教の信念体系と儀礼体系 を説明することにより、宗教的アイデンティティを維持する経典解説と理解する ことができる。教理の根本が経典だという点から経典を理解するレベルと観点 によって、他の教理として理解されたり説明されたりもする。これは、同じ経典を 使用していながらも様々な教理の教派が形成される理由でもある。

 

 経典が形成されて変化したり、新しい経典が編纂される現象は、宗教のアイデ ンティティ形成及び変化と共に起こるのが普通であるため、経典の変化は直ちに 宗教のアイデンティティの変化として理解することができる。特定宗教のアイデン ティティが形成されて変わるのは自然な現象だといえるが、アイデンティティの変化かどうかということよりももっと重要なことは、アイデンティティの変化と関連した宗教的一貫性と、合意を伴うアイデンティティの合理化だと言うことができる。

 

 信仰者たちが宗教の経典を絶対視するのは、経典形成過程を通して経典に含ま れている歴史や神話的事件を神聖視して経典を真理自体として信じたり、真理を教えるコンパスや教科書として経典を考えるからである。ところが、特定宗教の経典変化の過程と結果がその宗教が信仰者たちに教えてきたアイデンティティとは無関係 だったり異質である場合、経典の変化は必然的に宗教的混沌と分派をもたらす。創始者他界4周忌を経て混沌と分裂に陥った統一教会の例はこれに属する。


 新宗教創始者が生存している場合は、創始者の言動や宗教体験から始まる創始者アイデンティティ自体が、その新宗教を代表するアイデンティティとなる。特に創始者アイデンティティの変化が頻繁な場合、体系化された経典を整えることが 容易ではない。新宗教の初期に、創始者の宗教体験などに関連する創始者の教示 が経典を代身し、創始者の言動と教示を記録することにより経典編纂として発展する。経典編纂の必要性は、経典に対する創始者の認識によって創始者の生前には 行われず、創始者の死後に行われる場合が多い。経典は、創始者のアイデンティテ ィとカリスマを強化し維持するために、かなりの努力をする。いずれの場合も、創始者アイデンティティを破壊したり矛盾する内容で経典を作る例はない。

 

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