統一教会の経典の秘密

韓国メシヤ運動史研究所シリーズ第5巻 統一教会の経典の秘密 『原理原本』から『真の父母経』まで

韓鶴子現象を文鮮明の統一教会とは別の新しい宗教が発生する初期現象と見ることができる

 本書の研究を通じて統一教会の経典変化の過程において発見される特徴は次の通りである。


①『原理原本』『原理解説』『原理講論』を始めとする「八大教材教本」は、 創始者が復帰摂理過程で救世の使命を完遂する為に作り、天の前に「奉献」した 統一教会の経典であった。この経典は、創始者アイデンティティを代身するだけでなく、統一教会アイデンティティや真理、歴史など、統一教会の全ての伝統を含んでいる。経典が提示する一貫した主題は、「創造→堕落→復帰」という摂理観に従って神様の長子として神様の血統を代身した創始者が、全人類を神様の血統に復帰させ、神様の下の一家族、真の家庭の地上天国を実現することであった。創始者はこれを実現する為に「八大教材教本」を人類に遺産として残すと語り、変わることのない神様の遺言であると規定し、経典に絶対に手を加えてはならないことを強く教示した。


韓鶴子は、創始者との葛藤が尋常ではなくなっていた2012年4月頃、創始者のみ言葉選集を取り上げて、特定部分のみを削除して再発刊した。露骨に描写された男女の生殖器関連の言及に手を加えるとの名分によって「み言葉」を毀損 した。さらには2012年8月23日に創始者が集中治療室で生死の境をさ迷っていた時、韓鶴子は、創始者が神様の遺言だと規定した「八大教材教本」を統廃合する為に「経典改定編纂委員会」を発足させた。


韓鶴子統一教会創始者の他界後、「真の家庭」と統一教会全体が分裂の渦に陥っていたにも関わらず、創始者の経典統廃合を敢行し、「天一国三大経 典」という名称で『改定天聖経』『平和経』『真の父母経』を編纂した。


④編纂委員会が提示した経典(文鮮明の『天聖経』)改定の根拠は、第1に 2003年以後の創始者の教示を補完する為、第2に聖書のように誰でも容易に創始者のみ言葉を探すことができるようにする為、第3に創始者が他界する前に「み言葉集を整備しておかなければならず、間違った所があれば訂正しておかなければならない」と語ったためであった。委員会は、経典の改定を統一教会の伝統の「伝承」次元で推進すると主張したが、伝承すべき伝統、伝承の内容、そして伝承の主体から「真の家庭」(創始者の直系家庭)を意図的に排除した。


⑤経典の改定過程は創始者の意思は言うまでもなく、統一教会の伝統や構成員の意思とは無関係に韓鶴子の指示で始まった。文亨進と呉澤龍などが主唱した韓鶴子神様の夫人論の内容に従って、編纂委員長の金榮輝は、創始者と完全に一つとなった存在が韓鶴子であるため、経典の改定を決定した韓鶴子の意思は即ち創始者の意思であると主張した。


創始者の「八大教材教本」を修正及び統廃合して作った韓鶴子の経典は、 統一教会アイデンティティの根幹であった創始者アイデンティティの代わりに、神格化した韓鶴子アイデンティティが中心となった『真の父母経』に終結され、これは韓鶴子統一教会統治の教理的根拠となり、統一教会ではない別の新宗教現象として続いている。
教理や経典を含めた宗教のアイデンティティの変化は、宗教の発生と展開過程において自然な現象である。変化する環境に宗教が適応するのは当然であるが、それは宗教も有機体のようにより良い状態を志向するからである。しかし、充分な合理化過程と研究なしにアイデンティティの変更を宗教的伝統と衝突する方向に試みるとすれば、宗教は必然的に衰退し、これ以上の永続性は難しくなり、分裂と分派へと繋がっていく。


 このような観点から、統一教会創始者が他界して4年が過ぎた現在、統一教会の全ての運動は危機に直面している。この危機は、統一教会アイデンティティの根である「真の父」(創始者)のアイデンティティが、「真の母」(韓鶴子)のアイデンティティによって否定され、互いに矛盾を起こして発生する危機である。「真の父」と「真の母」のアイデンティティの矛盾と分裂は、統一教会アイデンティティの断絶と破滅を意味する。


 参加観察を主とする新宗教研究者である筆者にとって、創始者の他界前後に起きた統一教会の分裂と、迅速に創始者の経典を毀損し統廃合した統一教会 の現象は非常に特異な現象である。特に、統一教会の「真の母」韓鶴子統一教会創始者文鮮明の血統と宗教的アイデンティティを否定し廃棄している現象は、韓鶴子現象を文鮮明統一教会とは別の新しい宗教が発生する初期現象と見ることができる最も確実な理由である。創始者の他界直後に創始者のカリスマとアイデンティティ創始者の妻である韓鶴子によって破壊される現象は、その由来を見つけるのが難しい。韓鶴子による新しい宗教現象がこれからどのように展開されるか、その帰趨が注目される。

 

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