統一教会の分裂と経典を毀損した韓鶴子
統一教会創始者は、自分がイエスから受けた宗教的アイデンティティと強力なカリスマを道具として、血統復帰神話と統一教会の信念体系、儀礼体系を強固に成してきた。彼が成した膨大な宗教的体系と理想世界建設の為の活動は、新宗教史としては見出しがたい業績に違いない。
しかし、結論的に言うと『原理原本』から始まり、「八大教材教本」に至るまで、 人類救援の為の教本と教材を完成させるなど、救世の使命を果たそうとした創始者と統一教会の全ての努力は、分裂し危機を迎えている。その分裂は単なる分裂ではなく、創始者のアイデンティティを代表する創始者の直系家庭である「真の家庭」の分裂であり、血統的アイデンティティが変質し、結局、創始者の統一 教会が消えてしまい、新しい宗教が生まれる危機である。それだけでなく、創始者のカリスマは、創始者の他界後に日常化*2を超えて、韓鶴子によって消滅の段階に進んでいる。「真のお母様メシヤ論」や「真のお母様神様論」「真のお母様神様の夫人論」「独生女論」のような新たな教理で創始者の妻である韓鶴子が自ら「神様の夫人」や「独生女」「女王」などのカリスマを生産しているが、これは創始者とは無関係な新しいアイデンティティのカリスマである。厳密に言うと「真の父」のアイデンティティとカリスマを基盤に形成された「真の母」のカリスマは、「真の父」(創始者)のカリスマが消えるのと同時に、一緒に消えてしまった。
その根拠は、まず、2017年3月現在、統一教会の動機となる真の父母(創始者) のアイデンティティが真の父母(韓鶴子)のアイデンティティによって否定されてお り、韓鶴子の統一教会は、創始者の統一教会とは異なる新たな宗教現象として現れているという事実、第2に、創始者のカリスマ伝授の試みが失敗に終わる過程で、創始者のカリスマの実体が暴露され消滅したという事実、第3に、創始者の宗教的理想である「真の家庭」が深刻に分裂し、統一教会の宗教的正当性が消えたという事実、第4に、創始者の一部の家族と幹部の道徳性が暴露されているという事実、第5に、統一教会の資産の独占と、これをめぐる訴訟が未だ深刻化しているという事実などである。
創始者他界の前後に起きた統一教会の分裂は、創始者の「真の子女」(直系の子女)でなく、「真の母」(韓鶴子)の統一教会統治で縫い合わせられた。この結論に至る間、韓鶴子、文亨進、文國進が文顯進を追い出した事件、韓鶴子と統一教会組織が再び文亨進と文國進を追い出した事件、創始者の家庭で起きたいくつかの悲劇的事件、各種訴訟などで統一教会の組織は膨大な打撃を受けた。韓鶴子の統一教会統治は、創始者のアイデンティティと衝突する韓鶴子の神格化作業を通じて教理化・合理化されている。こうした根拠として筆者は、創始者のアイデ ンティティが排除された韓鶴子の統一教会を新宗教現象と見ている。