統一教会の経典の秘密

韓国メシヤ運動史研究所シリーズ第5巻 統一教会の経典の秘密 『原理原本』から『真の父母経』まで

韓鶴子現象を文鮮明の統一教会とは別の新しい宗教が発生する初期現象と見ることができる

 本書の研究を通じて統一教会の経典変化の過程において発見される特徴は次の通りである。


①『原理原本』『原理解説』『原理講論』を始めとする「八大教材教本」は、 創始者が復帰摂理過程で救世の使命を完遂する為に作り、天の前に「奉献」した 統一教会の経典であった。この経典は、創始者アイデンティティを代身するだけでなく、統一教会アイデンティティや真理、歴史など、統一教会の全ての伝統を含んでいる。経典が提示する一貫した主題は、「創造→堕落→復帰」という摂理観に従って神様の長子として神様の血統を代身した創始者が、全人類を神様の血統に復帰させ、神様の下の一家族、真の家庭の地上天国を実現することであった。創始者はこれを実現する為に「八大教材教本」を人類に遺産として残すと語り、変わることのない神様の遺言であると規定し、経典に絶対に手を加えてはならないことを強く教示した。


韓鶴子は、創始者との葛藤が尋常ではなくなっていた2012年4月頃、創始者のみ言葉選集を取り上げて、特定部分のみを削除して再発刊した。露骨に描写された男女の生殖器関連の言及に手を加えるとの名分によって「み言葉」を毀損 した。さらには2012年8月23日に創始者が集中治療室で生死の境をさ迷っていた時、韓鶴子は、創始者が神様の遺言だと規定した「八大教材教本」を統廃合する為に「経典改定編纂委員会」を発足させた。


韓鶴子統一教会創始者の他界後、「真の家庭」と統一教会全体が分裂の渦に陥っていたにも関わらず、創始者の経典統廃合を敢行し、「天一国三大経 典」という名称で『改定天聖経』『平和経』『真の父母経』を編纂した。


④編纂委員会が提示した経典(文鮮明の『天聖経』)改定の根拠は、第1に 2003年以後の創始者の教示を補完する為、第2に聖書のように誰でも容易に創始者のみ言葉を探すことができるようにする為、第3に創始者が他界する前に「み言葉集を整備しておかなければならず、間違った所があれば訂正しておかなければならない」と語ったためであった。委員会は、経典の改定を統一教会の伝統の「伝承」次元で推進すると主張したが、伝承すべき伝統、伝承の内容、そして伝承の主体から「真の家庭」(創始者の直系家庭)を意図的に排除した。


⑤経典の改定過程は創始者の意思は言うまでもなく、統一教会の伝統や構成員の意思とは無関係に韓鶴子の指示で始まった。文亨進と呉澤龍などが主唱した韓鶴子神様の夫人論の内容に従って、編纂委員長の金榮輝は、創始者と完全に一つとなった存在が韓鶴子であるため、経典の改定を決定した韓鶴子の意思は即ち創始者の意思であると主張した。


創始者の「八大教材教本」を修正及び統廃合して作った韓鶴子の経典は、 統一教会アイデンティティの根幹であった創始者アイデンティティの代わりに、神格化した韓鶴子アイデンティティが中心となった『真の父母経』に終結され、これは韓鶴子統一教会統治の教理的根拠となり、統一教会ではない別の新宗教現象として続いている。
教理や経典を含めた宗教のアイデンティティの変化は、宗教の発生と展開過程において自然な現象である。変化する環境に宗教が適応するのは当然であるが、それは宗教も有機体のようにより良い状態を志向するからである。しかし、充分な合理化過程と研究なしにアイデンティティの変更を宗教的伝統と衝突する方向に試みるとすれば、宗教は必然的に衰退し、これ以上の永続性は難しくなり、分裂と分派へと繋がっていく。


 このような観点から、統一教会創始者が他界して4年が過ぎた現在、統一教会の全ての運動は危機に直面している。この危機は、統一教会アイデンティティの根である「真の父」(創始者)のアイデンティティが、「真の母」(韓鶴子)のアイデンティティによって否定され、互いに矛盾を起こして発生する危機である。「真の父」と「真の母」のアイデンティティの矛盾と分裂は、統一教会アイデンティティの断絶と破滅を意味する。


 参加観察を主とする新宗教研究者である筆者にとって、創始者の他界前後に起きた統一教会の分裂と、迅速に創始者の経典を毀損し統廃合した統一教会 の現象は非常に特異な現象である。特に、統一教会の「真の母」韓鶴子統一教会創始者文鮮明の血統と宗教的アイデンティティを否定し廃棄している現象は、韓鶴子現象を文鮮明統一教会とは別の新しい宗教が発生する初期現象と見ることができる最も確実な理由である。創始者の他界直後に創始者のカリスマとアイデンティティ創始者の妻である韓鶴子によって破壊される現象は、その由来を見つけるのが難しい。韓鶴子による新しい宗教現象がこれからどのように展開されるか、その帰趨が注目される。

 

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韓鶴子の三大経典が「偽書」と批判される決定的な根拠

(3)『真の父母経』の偽書論争

 韓鶴子が心血を注いで天一国三大経典の中の宝石として『真の父母経』を作ったが、衝撃的な事実は神格化に必要な韓鶴子に重きを置く教示や「み言葉」が『真の父母経』の編集過程で量的・質的にあまりにも足らないため、これを満たす為に他人の文章や証をまるで韓鶴子の「み言葉」のように捏造した多くの文章が『真の父母経』において発見されている点である。独生女を神学的に論証して韓鶴子を神格化する為に、『真の父母経』の編集者が如何なる苦悩をしたのか知ることができ る。これは、韓鶴子の三大経典が「偽書」と批判される決定的な根拠と見られる。


 『真の父母経』は、韓鶴子神格化の根拠を「韓鶴子出生の神秘とこれに対する絶対予定*1、再臨主(創始者)と結婚した女性としての宗教的地位*2創始者からの韓鶴子完成認定」など*3において集中的に探している。統一原理の観点から見ると、韓鶴子の価値は創始者の「言及*4」や神秘かつ神話的な事件*5ではなく、「神様」の真の愛を中心に主体である創始者と対象である韓鶴子が一つになって真の家庭の四位基台を完成し、全人類のモデル家庭の真の母になるところに見出すことができる。韓鶴子を神格化する発想は、神話的・崇拝的次元の宗教を超越して、真の家庭中心の理想世界を現在に、そして地上に成そうとしてきた「真の父母」(創始者)の摂理的目標とは相当の距離があるように見える。特に韓鶴子出生の神秘を韓鶴子の母親である洪順愛の証に主に依存しており、これを韓鶴子神格化の根拠にした点は、宗派的特性に拘束されている韓鶴子のアイ デンティティと『真の父母経』の限界と言える。

『真の父母経』の「序文」によると
「…このたび発刊する『真の父母経』は、三大祝福を実現することによって神様の恨を解こうと生涯を生きてこられた御夫妻の行跡を、み言葉を中心として13編に分類し、真の父母様の主要摂理の実録を収録しました。…その膨大なみ言を、真の父母様が成就された業績を中心大綱に据え、縦横・前後から立体的に整理し、『真の父母経』という名称で集大成することになりました。『真の父母経』は、真の父母様の聖誕と成長、召命、聖婚、そして人類救援と平和世界実現のための多様な摂理的行跡など、感動的な生涯路程に関するみ言を、一目瞭然に整理したものです。したがって、『真の父母経』は真の父母様が残された血と汗と涙の戦勝記録であり、摂理史の最終報告書であると言うことができます。…」

と明らかにしている。八大教材教本が創始者の「み言葉」と教示であるために 統一教会の公認された経典として認められたのと同じように、『真の父母経』が経典として認められる為には必ず、序文で明らかにされているように、その内容 は全面的に「真の父母」(創始者韓鶴子)の「み言葉」でなければならない。

 2013年に金榮輝が「お父様のみ言葉を使わず他人のみ言葉を使えば偽作になるのであって、どうして偽作になりますか」と主張したように*6、『真の父母経』において僅か1文章でも「真のお母様のみ言葉」ではない他人の言葉や文を「真のお母様のみ言葉」として偽装して紛れ込ませたなら、『真の父母経』は経典としての価値を喪失する。

 結論的に言って、統一教会の最後の経典として作られ、大々的に販売された 『真の父母経』は、金榮輝の主張どおり偽作経典という非難を避け難いように思われる。その理由は、2009年1月30日に梁昌植が発行(コ・ハクチョル編集)した『真の父母様の生涯と摂理*7』の内容の一部を助詞までほぼ一致させて表記 し、「真のお母様のみ言葉」としてカモフラージュさせたからである。

 

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*1:『真の父母経』第2編第2章,「真のお母様の聖誕」,133-148頁. 

*2:『真の父母経』第1編第2章,「真の父母様の聖婚と真の父母時代」,67-84頁.

*3:『真の父母経』第2編第4章第4節,「真のお母様の苦難と勝利の道」,198-206頁.

*4:『み言葉選集』第236巻109頁,1992.11.3.「この洪順愛ハルモニと今のオモニとで3代一人娘です。 再臨主を迎える為に3代を治理したのがオモニの系統です。今まで3代を苦労した女達が何処にい ますか。そういう何かが分かったのでオモニを選んだというのです。3代以上の歴史に侍ることが できないのです。それでオモニを選び立てたのです」

*5:『真の父母様の生涯と摂理2』44頁,「韓承運の幻想を通じて韓鶴子の名前をつけた」;「サタンが 鶴子の誕生を脅かした」『真の父母様の生涯と摂理2』45頁.;『真の父母様の生涯と摂理2』46 頁.:許孝彬の母親が韓鶴子を見て天の新婦になると言ったという洪順愛の証;『真の父母様の生涯と摂理2』47頁.:白いチョゴリを着た不老のハルモニが天の啓示を受けて祝福してくれる幻想を見たという韓鶴子の言及;『真の父母様の生涯と摂理2』54-55頁.:済州島時代に見知らぬ男が訪ねて来て「この方は天地の間に神聖なお方です。2つの大事を持って出てこられました。ところが、 道で成功してこそ大きくなるのであって、そうでなくて世に出ていけば反対に逆賊になります」と言ったという洪順愛の言及。

*6:世界平和統一家庭連合,「天聖経増補版に対する正しい理解と摂理的価値」2013.7.8. 

*7:歴史編纂委員会,『真の父母様の生涯と摂理2』「真の父母様の聖婚と第1次7年路程(1960-1967)」 (ソウル:成和出版社,2009).

彼らの言う真実とは「無原罪の韓鶴子独生女が有原罪の堕落した 血統の創始者を復帰させ救ってあげた」という独生女の主張

7)創始者の血統を公的に否定した独生女

 創始者の他界後、韓鶴子の独生女に対する自意識は、神様の夫人論を通じた 「創始者と同等な価値の完成した真の母」から「良い血統の独生女」に変わってからは「純血の無原罪の独生女」の主張に発展していった。韓鶴子は現在さらに一歩進 み、「アボジ(創始者)は有原罪の堕落の血統であり、オモニ(韓鶴子)は純血の無原罪の独生女である。そしてオモニがアボジの血統を復帰させ救ってあげた」と主張している。金振春、金恒濟、呉澤龍、文善英や創始者の長女である文誉進などは 韓鶴子の独生女の主張を合理化する教理化に集中しているものと見られる。


「私は腹中から3代が独り娘の母系であり、血統を転換し原罪を清算して純血で誕生した独生女ですが、お父様は原罪を持って生まれました。私は独り娘として生まれましが、お父様には多くの兄弟がいます。お父様が原罪なしに生まれたのなら、その兄弟も原罪がないということになります。それゆえ、お父様は原罪なしに生まれたのではないのです*1」 


「原罪を持って生まれたアボジは、原罪なしに地上に生まれた独生女に出会うことで原罪が清算されたのです。ですからアボジは私に会う前には他の女の人と結婚をしてはならなかったのです*2!」 


 2016年の初頭から韓鶴子は周辺幹部たちに自分の血統認識に基づいた独生女の主張を表明してきたが、統一教会全体の信仰者たちには公開されなかった。独生女の主張が今まで創始者統一教会が教示してきた統一教会の教理と違っており、これが公開されると深刻な反発が起きる可能性が大きかったからである。しかし統一教会は「真実を明らかにすべき時」になったことを明らかにし た*3。勿論、彼らの言う真実とは「無原罪の韓鶴子独生女が有原罪の堕落した 血統の創始者を復帰させ救ってあげた」という独生女の主張である。

 

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*1:2016.12.25.天正宮で開かれた「姜賢實対策17名集会」での韓鶴子の発言要旨

*2:韓鶴子の教示、430家庭以上の元老女性集会(2016.12.30).この日の参席者は韓鶴子の教示を聞き、「蕩減復帰摂理の主人公が再臨主であるお父様ではなく、韓鶴子独生女であり、原罪を持ったお父様を、独生女の韓鶴子が原罪を清算させて救ってあげた」という意味に理解したという。; 2017.2.6.この行事に同参した秦成培教授の話を伝え聞いたC教授の証言

*3:金振春,『真の父母様の独生子・独生女研究』266頁.

「真のお父様は堕落した血統を持っておられる、私だけが純潔な独生女」:天正宮会議

③文亨進の独生女に関する言及


 2013年3月6日、韓鶴子から公職を解任された文亨進は、米国で自分を天一国第2代王として規定し、統一教会人らを対象とした独自の宗教活動をしている。非常に特異なことは、韓鶴子の「神様の夫人」認識や「独生女」認識にかなり貢献した文亨進が2015年初めから韓鶴子を「堕落したエバ、バビロンの淫婦、レズビアン」と非難を超えて罵倒している現象である。また、経典改定が露骨になった2012年4月頃、統一教会世界会長として経典改定を知らなかったはずはなかった文亨進が現在は、統一教会の経典改定に非常に批判的であることも特異な現象である。

 文亨進は2013年1月から毎週1-2回、YouTubeを通して自分の説教を公開しているが、説教の回数を重ねるごとに、韓鶴子の秘密と真の家庭の内密な家庭事情を露骨に暴露している。文亨進の暴露は韓鶴子を非難することに目的を置いているが、これが非統一教会人に知られた場合、今後の統一教会布教に莫大な支障を与え得る。文亨進は創始者の血統的アイデンティティを否定する韓鶴子の不従順が昔から行われてきたものであり、これに伴う創始者夫婦の不和が深刻だったことを証言している。

 

● 2015年3月15日文亨進の説教:万王の王億万歳*1
「まったく天使長たちが何をどうしたら『真のお父様は原罪を持ってお生まれになり、真のお母様は原罪なく生まれた』とお母様に信じさせたのか、私は理解できません。…(お父様聖和前に)天正宮の壁付暖炉の前で真の父母 様ご夫妻と一緒に座っていた時の会話を私は今も憶えています。真のお母様は真のお父様に『お父様も堕落した血統ではないですか』と言いました。その言葉にとても呆れ果てた様子の真のお父様の表情を私は目撃しました。… 私が天福宮で仕事をしていた当時、李会長以下多くの局長や訓師様たちと天正宮で会議を持ったことがありました。真のお母様を迎えての会議でした。 再び真のお母様が『真のお父様は堕落した血統を持っておられる』『私だけが純潔な独生女であり』等々、真のお母様が再び力説されました」

 もちろん、2016年12月25日*2と30日*3韓鶴子は、創始者の血統的アイデン ティティを否定し、自分の無原罪独生女血統を公開の場で初めて言及したが、文亨進のこの説教は、創始者の血統的アイデンティティ韓鶴子が否定しているという事実が、第3者によって公開される最初のきっかけとなった。


● 2015年3月22日文亨進の説教:霊界を体験しろ*4
「今、私たちの教会の状況を考えてみると、真のお母様の位置を自分の位置であるかのように考える天使長グループがいます。彼らはお母様が自分の対象の位置を離れるように勧め、お母様が神様であり、メシヤであり、独生女だと信じさせています」


● 2015年3月29日文亨進説教:真理の霊(The Spirit of Truth)*5

「真のお母様を操る天使長の群れが、真のお母様が自分が神様であり、独生女であると信じさせ、真のお父様からは何も学んだことがないと信じてみ言葉を語らせています。真のお母様が、そのような一連のことを信じておられるということです。
 お母様は私に『一度も原理を勉強したことがない』と言われました。お母様が直接言われました。聖書の勉強をしたことがないと言うのです。しかし、 勉強はしなくとも、全てのみ言葉を全て知っていると言われました。 私は覚えています。天正宮が完成されてからというもの、何か以前と違う霊的雰囲気を感じたのです。その霊的雰囲気は、だからその…何と言おうか、『私が真のお父様を作った』というような雰囲気でした。 真のお母様は自分で自分は唯一の独生女だと信じるようにされ、説教するようにしました。自分だけ唯一の独生女だということを、全ての人に伝播しろと指示しておられるということです。『私は罪のない血統から生まれたが、 真のお父様は罪を持って生まれた』と語っておられます。『私はお父様に学んだことは一つもない』とも語られます。
真のお母様には素晴らしい龍袍が着せられ王冠をかぶって、王権の象徴の指揮棒も自ら持たれ、『今は真のお母様の治理時代である』というメッセー ジを伝えられました。その後のメッセージは何ですか。『真の母は独生女である』です。『私も神様である』『お父様は原罪を持って生まれたのかも知 れないが、私は原罪なく生まれた』という一連のみ言葉でした。これは、真 のお母様の位置を離れられた行動です」

 

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マスコミに報道された独生女

②マスコミに報道された独生女

 韓鶴子のインタビューと家庭連合が配布した報道資料の内容は、現在、家庭連合が信じている独生女の意味を客観的に理解できる重要な資料である。これを通じて韓鶴子の「み言葉」と文亨進の説教から把握される独生女論の実体が事実であることが客観的に確認される。

「『イエスは第2アダムとして来られた方です。ところが、相対を成すことができませんでした。家庭を成すことができなかったということです。それゆえ再び来ると言いました。その時に言われたことが、私が来て小羊の婚宴をするということでした。ヨハネの黙示録に出てきます。これが何ですか。結婚するということです。(イエス以後)キリスト教2000年歴史は、独生女の基盤を築いてきたのです。キリスト教徒たちはこれを知りません』
 特に韓総裁は、自分の死後にも備えているというのが統一教会側の説明である。血統より法統を重視してきた韓総裁の性向に照らしてみると、場合によっては後継構図において子息を排除することもあり得るという話も出てくる。これと関連して注目されているのは、2013年8月に韓総裁に伝達された『天一憲法』である。統一教会側は、『天一憲法には最高議決機関である天一国最高委員会の構成と権限などが銘記されている。韓総裁は有故 (万が一の事態) まで念頭に置いて、最高委が自身の権限まで代行するように莫大な権限を賦与した。最高委が家庭連合の後継構図まで決定できるという意味と解釈できる』と説明している*1

 この記事は韓鶴子統一教会創始者の伝統に逆行する未来を設計していることを報道している。神様の創造理想は神様の真の愛を中心として「真の父」 である創始者と「真の母」である韓鶴子が完全な一体を成し、「真の子女」と共に「真の家庭」を成し、真の愛の四位基台を完成することによって成し遂げられる。今までの創始者の教示と一般的な統一教会の信仰から見ると、摂理の未来は「真の家庭(創始者の家庭)」と「真の子女(創始者の直系の子女)」が意図的に排除された天一国最高委員会のような特定組織ではなく、真の家庭を中心に作った全ての祝福家庭が一家親戚になって真の家庭の一家を成し、世界的に拡大していくことであった。ところが、韓鶴子は後継構図から統一教会を浄化しようとする自分の子女を意図的に追い出し、真の家庭の四位基台を排除した「後継構図」を図ることによって、統一教会アイデンティティの土台である「真の家庭」の理想と摂理的理想を放棄したという非難を浴びかねない。


「独生女は神様の一人息子であるイエス(独生子)に当てた表現であり、家庭連合では文鮮明総裁を独生子、韓鶴子総裁を独生女と称する*2

文鮮明総裁に出会う前から、韓鶴子総裁は天によって養育され保護された。大母様は韓総裁を神様の唯一の『独生女』として育てた。…統一教会 内で韓総裁は、文総裁と『同格』の地位に定着しつつある。今後、韓総裁の地位はこれよりさらに高くなる可能性も大きい。統一教会の核心幹部らは『来る8月30日が文総裁の聖和3周年になる日であるが、3周年は脱喪(忌明け)の意味を持っている』とし、『文総裁を偲び過去を思い出す時間ではなく、韓総裁を中心に一つになって文総裁の遺業を継承し、未来に向けて前進する時間となる予定』と明らかにした。実質的な教主として韓総裁の役割の強化が予想される内容である。『ポスト文鮮明』として息子ではなく娘が浮上したことも、同じ脈絡で解釈できる。『大母様』から『韓総裁』、そして『文世界会長(文善進)』と繋がる母系中心の体制改編が成されながら、『女性のリーダーシップ』が浮き彫りにされているのである。…キリスト教の2000年歴史は『独生女』の基盤を築いてきた歴史である。…*3

 

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*1:2015.5.25.『週刊朝鮮』2358号.韓鶴子インタビュー記事の要約.

*2:2015.5.17.『月刊中央』2015.6号.[単独インタビュー] 韓鶴子世界平和統一家庭連合総裁「世の中 の全ての家庭に『真の家庭』の祝福を与えることが使命」

*3:2015.5.28.『時事ジャーナル』「韓鶴子統一教会母系後継体制始動」

文姸進と文情進の結婚式直後、韓鶴子は独生女に対してより具体的に言及

● 2014年9月12日、文姸進と文情進の結婚式直後、韓鶴子は独生女に対してより具体的に言及した。

 

「天は独生子だけを送ろうと準備されるでしょうか。独生女も準備したのです。その摂理歴史で選ばれた民族が失敗すれば、その民族を2度と使わないでしょう。そのことを私たちは原理を通じて知っているでしょう。そのために、天は安全を期して西で起きた時に東を見られたのです。それは皆さんが 知っているか解りませんが、独生女の背景です。少し勉強してみなさい。…ところで皆さんは聞いたかどうか解りませんが、私は天の父母の保護圏において育った者です。母胎から堕落した人間とは分離されていました。それを知らなければなりません、皆さん。そのために私に誰かが原理のみ言葉一つ語ってくれなくても、私は自らこれが私が行くべき道なら行く。私一人によって天の父母様が解放され、人類が解放されるというような強迫感。
…(私が)真の父母として決心して歩んできた道は真の父母の道だが、この道は華やかな道ではない。蕩減を解決しなければならない道だ。蕩減復帰摂理歴史は知ってるだろう。そのために、皆さんは私を背負って行かなければならない。地に足が触れないように保護しなければならない。それは、私たちは根本が違うではないか。それで、祝福の歴史が始まった。それで、堕落の血統を脱ぐことができるようになった。
…今、愚かな者たちが多い。お父様が亡くなったので、自分がお父様の代身者だ、何、お母様は責任を果たせなかったとか、ああだこうだ言う者たちは可哀想だ。…これ(堕落の血統を脱ぐ事)は誰にでもできないことだ。独生女にしかできない。独生女確定者。独生子の位置は2000年前に立てられた。お父様はイエス様が現われて、自身が成せなかった使命を引き受けて下さい、そのよ うにして、スイッチされたのだ。分かるか。天は始めと終りが同じだ。独生子が 2人になることはできないだろう。一人だ、一人。ところが、独生女はいなかったでしょう。…ですから私でなければならない。私以外には誰もできない。それを知らなければならない、皆さん。皆さんは全て祝福を受けたでしょう」

 

 この日、「真の家庭」の文姸進と文情進が見慣れない西洋男性と結婚式を挙げた。この西洋男性の2人は清平で40日修練を受けることで真の家庭の構成員になることができた。彼らのプロフィールについて知る人はいなかった。これは既存の統一教会の伝統から逸脱した異例の結婚式であった。伝統的に真の家庭の子女は、統一教会内の祝福家庭の子女と婚姻してきた。統一教会の「血統 」と伝統を守る模範を真の家庭は守ってきたが、この場合、真の家庭の子女が 統一教会の伝統と無関係であり、統一教会の神学的観点において「堕落の血統」と血統的関係を結んだという事実は、あまりにも破格的な措置であらざるを得なかったが、韓鶴子が説明するこの結婚式の神学的価値はあまりにも簡単であった。

 

「今回の聖婚について皆さんが文句を付けられることは何もない。私が皆さんの為に生き、人類の為にしたことだ。天は絶対に損をすることはない。中心だけを皆さんがうまく捕まえていれば、私たちと一緒にしてやれ。先ほど金会長が奇蹟だと言ったでしょう。奇蹟だ。奇蹟が起こり得るのだ。そうではないか。 横に真の家庭の子女らが座っていて言ったことが、お母様は今度2人の息子を通じて2つの家門を伝道したと言うのだ。40日間、それも40日間で原理修練を受けさせたので。私が話した時間は2時間しかない。ところが、摂理歴史を全て解いて話した。それを見た子供たちがそのように言うのだ。いつか私があの世に行く前に70億人類にどれほど真の父母様を知らせ、真の父母様の恩賜圏内に生きるようにできるだろうか、皆さんはそこに焦点を合わせて見なければならない。それゆえ、残った2人の娘を祝福することで、皆さんにも良いことをしたのだ。祈祷でも少し列挙したが、本当に堕落した人類を再び救援するのに天の苦労は言いようがない*1

 

 この日、韓鶴子は独生女についてさらに一歩進んだ言及をしている。独生女によって人類が解放され、堕落の血統を脱ぐ業は独生女だけができるというので ある。しかし、この言及も創始者の教示やアイデンティティと異なっている。「堕落の血統」は独生女によって脱ぐのではなく、絶対者・神様を代身して完成した「真の父母」から男性と女性が神様の血統として転換されてこそ堕落の血統を脱ぐことができるというのが統一教会の普遍的信念である。独生女の血統は誰の血統であり、韓鶴子から祝福された人は韓鶴子の血統に転換されるのかといった質問が今後提起される可能性がある。
 韓鶴子のこのような認識により、独生女論に対する執着が深化しており、結局、創始者の伝統とは異なるアイデンティティに拡大していることを知る事がで きる。「私以外には誰もできない。私でなければならない」としながら、自分の信仰を宗教的信念として信仰者らに強弁する韓鶴子の姿は、創始者のアイデンテ ィティとは遠く離れている。韓鶴子が真の父母の摂理的価値を縮小し、それよりはるかに下位の概念である独生女に捉われるようになった背景が何なのかについて、文亨進の説教の中で言及されている。

 

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*1:2014.9.12.韓鶴子の説教.