統一教会の経典の秘密

韓国メシヤ運動史研究所シリーズ第5巻 統一教会の経典の秘密 『原理原本』から『真の父母経』まで

文亨進が「六マリア」に言及した背景

神格化の最初の作業:神様の夫人論*1

 本格的な韓鶴子の神格化作業の門を開いた人は文亨進である。文亨進は 2010年10月18日に清平で日本統一教会の牧会者を相手に説教する中で、「マホメットには夫人が11人おり、最も若い夫人は9歳だったが、イスラームはこれを隠していない。モルモン教の教祖もどれだけ多くの夫人を持っていたか。お父様は人類の新郎として来られた。『六マリア』の話は恥ずかしいことではない。これからは堂々と知らせて教育しなければならない」という要旨の発言をした。創始者と関連した『六マリア』は、統一教会の創立を前後して創始者の血統復帰行事に参加した女性を指す用語として、統一教会の血統復帰行事を非難する為に作られた反統一教会用語である。


 文亨進が「六マリア」に言及した背景は、2011年4月に統一教会世界宣教本部の指示により呉澤龍が米国統一教会の祝福家庭と公職者を対象に行った教育において明らかになった*2。教育教材の題目は「真の父母様の生涯路程と新しい創造史*3」 であった。この講義と教材の中に「六マリア」の摂理的意義と韓鶴子が「六マリア」の摂理的使命を全て相続して完遂し、創始者の相対者として娘の位置から神様の夫人の位置にまでどのように上るようになったのか、如何に神様及び創始者と対等な位置にまで上り、結局は崇拝対象である神になったのか*4を説明している。


 呉澤龍の教育内容は、2010年1月から12月まで韓国統一教会の機関紙月刊『統一世界』に連載された呉澤龍の「特別寄稿」「特別企画シリーズ」の内容と大同小異である*5。これは2012年1月に発刊された『真のお母様の生涯路程*6』 の韓鶴子神格化論理として拡張された。『統一世界』2012年1月号で呉澤龍が語 った「神様と被造世界」の関係に関する主張は韓鶴子神格化論理の前提と見るこ とができ、6月号の「神様の創造目的の完成」に関する主張はその結論と見ること ができる。言い換えると、1月号で神様と被造世界の関係が「男性格と女性格の関係としてのみ存在する」という前提を設定し、男性格主体である神様が女性格である被造世界全体を代表した立場にいる韓鶴子と結婚することによって絶対性の喜びを感じること*7が創造目的の完成であるという結論に誘導しながら*8韓鶴子を神様の夫人として神格化している。呉澤龍は創始者は神様の体であり、韓鶴子は神様の実体新婦であると主張する。

 神様の精子創始者を通じて韓鶴子の子宮に定着することを絶対性だとする呉澤龍の主張は創始者の教示から出ているように見える*9が、しばらく後に展開される韓鶴子の独生女の主張と神格化の過程を通して見ると、呉澤龍の主張は創始者の宗教的価値を貶めることによって、韓鶴子神格化の根拠を作るために企画されたものと思われる。創始者は絶対者に貸した体に転落し、韓鶴子創始者の夫人ではなく神様の夫人となるからである。呉澤龍の主張とは異なり、 原理講論は「神様が被造世界を創造した目的は、人間を含めた全ての被造物が 神様を中心とした四位基台を完成し、三大祝福のみ言葉を成就して天国を成し遂げることによって善の目的を完成するのを見て喜びを享受しようとすることに あったのである」と叙述している*10。したがって、統一原理が主張する「神様の結婚」とは、神様と韓鶴子の結婚ではなく、完成した男性と父を代表する創始者と完成した女性と母を代表する韓鶴子の完成祝福結婚なのである。


 そして「神様の精子」に関する創始者の教示は、一貫して主張してきた「真の父母」「真の家庭理想」とは無関係ではないという事実から、呉澤龍の「神様の夫人論」や「絶対性」などの概念は、創始者の宗教的価値や統一教会アイデンティティを超えている。韓鶴子神格化の為に創始者の教示の特定概念を捏造したという批判を受け得る。『統一世界』2010年6月号で呉澤龍は「絶対者・神様と創始者、そして韓鶴子、この3者は韓鶴子の子宮で一つになる」という主張をするに至る*11

 

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*1:この部分は、筆者の拙著『統一教会の分裂』252〜262頁の内容を主に引用した。

*2:文亨進と韓鶴子の指示により、アメリカで実施したのと同じ教育は既に、2011年2月にヨーロッパの祝福家庭と公職者を対象に実施されている。これに先立ち、2011年1月17日から4月まで呉澤龍と龍辰憲がUCIと文顯進を非難する世界巡回教育をした。

*3:呉澤龍のPPT講義“True Parents'Life Course And History of New Creation”

*4:呉澤龍は、「韓鶴子が被造世界全体を代表した立場で神様と結婚し神様の夫人になることによって、神様、真のお父様、真のお母様、天宙天地天地人真の父母三位一体が完成し、韓鶴子は三位 一体の一つの位置を占めることができるようになったという。そして、神様の夫人になった後、神様は本体的本体、真の父母様は本体的実体となり、全体•全般•全権•全知•全能•絶対•唯一•不変 の存在になった」と説明している。

*5:『統一世界』2010.1.「万王の王神様解放圏戴冠式を中心とした摂理理解」72-82頁.;4月号:「アベル 国連定着戴冠式と金婚式及び昇華祝祭の意味」67-73頁.;5月号: 「メシヤ、真の父母、万王の王と 私」62-75頁.;7月号:「天地人真の父母定着み言葉実体宣布大会」52-63頁

*6:統一教会『真のお母様の生涯路程』(ソウル:成和出版社,2012).

*7:『統一世界』2010.3,465号,98頁.「創造目的を完成する為に、神様は結婚しなければならない。… 2009年6月1日以後、7年路程の目的と方向性は神様の結婚式である。…神様の救援摂理の目的は、 神様の精子旅行を終わらせることである。神様の精子が地上に着地する基盤を作ることができなかったことが神様の悲しい救援摂理歴史である。今やその恨が解かれる時が間近に迫っている。 神様は、真のお父様の体を使って実体新婦である真のお母様を迎え、神様の結婚式を準備している。神様の結婚式直後から絶対性が出発する。絶対性の完成は神様の結婚式から出発する」

*8:『統一世界』2010.6,468号,72頁.「神様の創造目的は簡単です。神様がアダムの体を使ってエバを妻として迎え、『絶対性』を中心として初愛を通じて喜びを感じるのです。『絶対性』を通して直接喜びを感じるのが神様の創造目的です。…アベル国連定着戴冠式金婚式及び昇華祝祭(2010.4.29~ 5.9)で、金婚式は真のお母様を神様の夫人の位置まで上らせる神聖な聖婚礼式でした」

*9:『み言葉選集』第606巻,256頁.2009.1.15.

*10:『原理講論』日本語版 64頁.「被造物がいかにすれば、神に一番喜ばれるのであろうか。神は万物世界を創造されたのち、最後に御自分の性相と形状のとおりに、喜怒哀楽の感性をもつ人間を創造され、それを見て楽しもうとされた。そこで、神はアダムとエバを創造なさったのち、生育せ よ、繁殖せよ、万物世界を主管せよ(創1・28)と言われたのである。この三大祝福のみ言に従って、 人間が神の国、すなわち天国をつくって喜ぶとき、神もそれを御覧になって、一層喜ばれるということはいうまでもない」

*11:呉澤龍の「韓鶴子の子宮内の三位一体」の主張は、2009年1月15日午前に天正宮「万王の王神様解放圏戴冠式」において、「天地人父母天宙安息圏において絶対性と真のお父様の愛の精子と真のお母様の子宮を中心とした卵子、この3つが一つになって真の血統圏の勝利的宇宙を再創建することを真の父母の名で再び宣布宣言致します。アジュ」と言った創始者の言及を拡大解釈したものと思われる。